「実はね、その神殿に何かすごく大事な物が保管されてたらしいんだけど……襲撃を受けた日に無くなっちゃったんだって」
すごく大事な物とは、恐らく宝玉の事だろう。宝玉が無くなったのか……?
神妙な面もちで耳を傾けるウル。
「でもね、その神殿は、モンスターに荒らされた形跡が無いから、もしかしたら…その……、誰かが………」
「ドサクサに紛れて盗んだって事か」
ウルが後の言葉を引き継ぐ。
「俺たちを追ってきたって事は、疑ってるのか?」
ストレートに聞くウルに、キスティンは慌てて首を振った。
「違うのよ! あんた達を疑ってるんじゃないけど……」
「じゃ何で?」
今度はクレイグが問いかける。
『その神殿から盗まれたのは宝玉。黒竜が、己の力を増築させる為の、言わばお前達の言葉で言う魔法アイテムだ』
言葉に詰まるキスティンの代わりに、ラーマが言った。
『六千年戦争で追いつめられた黒竜は、恐らくもう勝てない事を悟ったのだろう。この地に魂の一部を込めた宝玉を残した』
いつか、宝玉から蘇る為に……──。
疲れたようにため息を吐きながら呟く。
『もう、お前達人間の計る時間で四千年。宝玉に残った魂が魔力を取り戻すには十分な時間だ……』
そこまで言うと、ラーマはウルに視線を向けた。
_

