魔法陣に立つコパンの目線に合わせて、ルッソは腰を屈(かが)めた。
不思議そうな顔をして転送の呪文を待つコパンを見つめ、小さな笑みを向けると、その肩に軽く手を乗せて言った。
「コパン、よく聞くんだ」
優しい口調で話し始めるルッソ。
「私は、ここから先一緒には行けない」
一瞬、ルッソの言葉が理解出来なかったのか、ゆっくりと少しずつ目を見開いていくコパン。
「私は、ラストル様の所に戻る。ここからは、お前がウル様とクレイグ様を助けるんだ」
コパンは、弾かれたように激しく首を横に振った。
目には涙が溜まり始める。
「コパン。……コパン、よく聞きなさい」
宥(なだ)めるルッソの言葉に、尚も強く首を振る。
「コパン、バジリスクに狙われた者は逃げられない。この地に住むピクシーは恐らく助からない」
優しく、コパンを抱き寄せる。
コパンの目から止めどなく涙が零れた。
ぎゅっとルッソにしがみつく。
「コパン……。私の可愛い子……。私は、ラストル様の傍に……、お前のお爺さまの傍にいると誓ったのだ」
コパンの背を優しく撫でながら、小さく呪文を唱えた。
途端に、コパンの体から力が抜ける。ルッソはコパンを優しく抱え、魔法陣の中に横たえた。
眠ったコパンの涙を優しく拭き上げる。
「……許せ、コパン……。これが私の選んだ道なのだ…」
魔法陣が淡く光り、コパンの体を包み込んだ……──。
「どうか生きて……。
ウル様、クレイグ様……コパンを、頼みます……」
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