町は活気に満ち溢れていた。

 夕暮れの日差しが強くなり、昼間よりも多くの人が町を賑わしている。

 今日は、祭りの日だ。

 ドラゴンがモンスターからこの町を守った十年目の記念すべき特別な日。

 嬉しそうに行き交う人々の合間を縫うように一つの影が足早に歩いていく。

 祭りの日には似つかわしくない仏頂面で歩くその影に、誰かが声をかけた。

「おぉ〜〜い!」

 無視。

「ちょ……、こらこら、待てって!」

 再び無視。

「聞こえてんだろーが! ウル!」

 ようやく足を止める。

 究極に嫌そうな顔をして、その影、ウルが振り返る。

「何だよ、クレイグ。今日は機嫌わりーんだけど」

「わかってるよ」

 ウルを呼び止めた声の主、クレイグはようやく追いついたウルの肩に手を置いた。

「あのな、ウル。
 お前が祭り事嫌いなのはこの五年の付き合いでよーっく分かってるが、今日ちょっと我慢してくんねぇかな?」

「は?」

 クレイグの言葉の意味が理解出来ずに聞き返す。

「いや実はさ、今日ちょっと約束しちまって一緒に祭りに行くことになってんだよ」

「行ってくりゃいいだろ」

 話は終わったとばかりに再び歩き出す。

「ちょーっちょちょ!!
 待てって、最後まで聞けよ」

 再びウルを捕まえるクレイグ。

「実は、行くのは俺一人じゃねーんだ」

「?」

 話の筋が見えない。
 ただでさえ、今日と言う日が腹立たしいのに、遠回し遠回しで話をする目の前の友人に若干の怒りが芽生える。

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