真っ暗な世界。僅かな光も見あたらず、ゾッとする。
ウルは、アテもなく歩いていた。特にどこに向かうでもなく、ただ歩いている。
唐突に、自分が向いているであろう方向に、ぼんやりと何かが浮かび上がる。
建物だ。
先ほどまで、自分が歩いていても前に進めているのか分からない程の闇の中だったが、今は歩けば歩いただけ建物が近づいてくる。
程なく、建物の傍までたどり着く。壁の所々がひび割れ、今にも倒れそうだ。
窓から中を覗いてみる。絵の具で塗りつぶされたような闇が広がっていた。
入り口に周り、一歩踏み込んで光を生み出す呪文を唱え始め…、途中で中断した。
何かが聞こえる。
《………っ……》
─……?
小さくて何の音なのか分からない。
《………る…っ!》
人の声のように聞こえる。遠くの方から大声で叫ぶような……。
─…なんだ……? 誰か居るのか?
建物から出て、辺りをキョロキョロと見渡す。
《……る! ……ウル…っ!》
─……呼んでいる…? 誰、だ…?
《…覚ませ……ウル……》
─………この……声は……。
突然、目の前に光が生まれた。光は、ウルを包み込んでいく。目が開けないほど眩しくなる中で、声がはっきり耳に届いた。
「目ぇ覚ませ! ウル!
起きねぇとちゅーすんぞ!」
「……………クレイグ……?」
いつの間にか光が消え、目を開けるとクレイグの顔が飛び込んできた。
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