そこにたどり着いたのは、深夜だった。
散乱した瓦礫の山。
焦げた臭いが地に染み着き、一夜過ぎた今もまだどこかが燃えているような雰囲気を醸し出していた。
人の気配は無い。その代わりに辺りを満たすのは死の気配。
灯りは一つも無かった。どこから街に入ったのかすら分からない。そこに、ウルは一人佇んでいた。
松明には生存者がいると記されていた。だが、そんな気配は微塵も感じない。
─……なぜだ……まさか、また襲撃されたのか……?
月明かりを頼りに、今にも倒壊しそうな建物の中を覗いて回る。
暗く、中の状況は全く見えない。
中に入り呪文を唱えると、手のひらを上に向け、光りを生み出した。
「─…っ!!」
淡い光が辺りを照らし出した瞬間、ウルは息を呑んだ。
建物の中、今にも崩れ落ちそうな壁に持たれるように倒れている亡骸が目に入る。
庇うように抱きしめた腕の中には、同じように赤子が息絶えていた。
言葉にならない思いがこみ上げ、ウルは建物を飛び出した。
他の建物を覗くと、そこにも亡骸が無惨に転がっている。
「………そんな……」
力なく、呟いた。
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