─もしかしたら……。
ウルは、恐る恐る松明に手を翳す。
熱気が全く感じない。
─やはりそうか…!
魔法で作られた炎の特徴だ。
炎に斑(まだら)がない。普通、炎には熱が弱い部分と強い部分がある。弱い部分は少し青みを帯び、強い部分は赤々としている。それは層になり、灯りに斑が出る。
だが、魔法によって作られる炎にはその特徴は出ない。
そう思うや否や、ウルは思いっきり燭台を蹴倒した。
燭台は勢いよく地面に叩きつけられ、松明が投げ飛ばされる。
辺りに火の粉が飛び散り、炎が散乱した。
次の瞬間、火の粉はまるで自我を持つかのように宙を舞い、形を作り始める。
ふわふわと舞う火の粉はその僅かな灯りを寄せ集め、文字を型どり始めた。
「ルーヴァ……の…民……」
ゆっくりと形になって行く文字を読む。
「せい…ぞ……ん……しゃ………あ…り……」
─ルーヴァの民、生存者有り!!
ウルは、はっと顔を上げた。ルーヴァには人がいる!
ロンドの言葉が再び頭をよぎった。
─もし、生き残りがいたら助けてやってくれ……。
自分に何か出来るだろうか…。だが、約束を交わしたした以上、行かなければならない気がした。
ウルは、再び暗い街道を歩き始める。一刻でも早く、ルーヴァに着くために……。
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