夜の蝶たち~沙織~

「となりのラックは女の子の私物だから、着ちゃダメだからね~。とりあえず、見てみて」

「はい」

そうは言ったものの、ドレスなんて着たことないから、どうしていいのかわからない。

「あの・・・ はじめてで、どれがいいのか分からないんですけど・・・」

「そっか~。水商売はじめて?」

「はい」

「ん~・・・ 好きな色は?」

「えっと、服はモノトーンを着ます」

「そっか~。そうすると・・・」

そう言いながら、ドレスを探し始めた。

「この辺なんかどうかな?」

出してくれたのは、シンプルな黒のロングドレスと、レースたっぷりのグレーのドレス、それに、黒地にグレーでバラの絵の入ったキラキラしたドレスだった。

「あ、バラのがキレイ・・・」

「はい。じゃあどうぞ~」

「ありがとうございます」

「ストレッチでファスナーないから、1人で着られるね。着替えたら、貴重品持って、出てきてね~」

「はい。ありがとうございました」

「いいえ~。後でね~」

そう言って、更衣室から出て行った。

よし! 着替えるぞ~。



着替えが終わって、姿見を見てみると・・・

着替えただけなのに、ちょっと別人みたい(笑)

やっぱりキレイ~、このドレス♪

とうとうキャバ嬢デビューだ!

おっと、貴重品持って、出るんだった。

お財布持って、ロッカー閉めて・・・

よし! いざ出陣! なんて(笑)



更衣室から出ると、さっきの場所に美沙さんがいた。

「あ、着替え終わった? 三沢さ~ん!!」

あたしを見て、三沢さんを呼んでくれた。

「沙織さん、着替え終わりました? あ、お財布ね。こっち来てもらえる?」

そう言って、また入り口のほうに歩き出した。

付いていくと、席から見えないところにレジがあった。

そこにはスーツを着た男の人が座っていた。

「お財布はここのキャッシャーって言うんだけど、レジの人に渡してください。ここで保管しますので」

「はい。お願いします」

そう言って、お財布を渡した。