夜の蝶たち~沙織~

「あ、それと、女の子によって保障時給が違うので、他の子には絶対に時給を聞かないでください。普通は未経験の子に、こんないい時給出さないんで」

「わかりました」

へぇ・・・

保障時給って女の子によって、変わるんだ・・・

「じゃあ、源氏名(げんじな)決めようか」

「源氏名?」

「そう。お店で使う名前なんだけど、本名の子もいるし、まったく違う名前を使う子もいるんだけど、どうする?」

「あ、本名の沙織でいいです」

「かわいい名前だもんね。じゃあ沙織さんで」

「それじゃあさっそく、着替えてもらって、接客マナーを教えるんだけど、ドレスは持ってないんだよね?」

「はい」

「じゃあ、お店のを使ってください。更衣室に案内しますね」

そう言って、三沢さんがお店の奥に向かって歩き出した。

付いていくと、女の子が1人、ドレスを着て、タバコを吸っていた。

「三沢さん、おはよ~。新しい子?」

その女の子が三沢さんに話しかけた。

「美沙さん、おはようございます。体入の沙織さんです」

「美沙で~す。沙織ちゃん、よろしくね!」

「よろしくお願いします」

美沙さんがあたしに手を振ってあいさつしてくれたので、あたしもお辞儀をして返した。

「美沙さん、沙織さん、はじめてなんで、店服(てんぷく)とロッカー、説明してもらえますか?」

「は~い。沙織ちゃん、おいで~」

そう言って、歩き出した。

「ここが更衣室です~。中で、女の子が着替えてるから、ノックして入ってね~。ってこの時間、まだ誰もいないと思うけど~(笑)」

そう言いながら、ドアをノックして開けた。

元気な人だなぁ・・・

「ロッカーはとりあえずここ、使って~」

そう言って、『体入』と書かれたロッカーを開けた。

「カギ、ないから、貴重品は入れないで預けてね~。で、ドレスないんだよね?」

「はい」

「そんな緊張しないで~。お店の貸しドレスを店服って言うんだけど、ここにあるのがそうだから、どれでも着ていいよ~」

そう言って、1つのラックを指差した。

「すご~い、いろいろあるんですね~」