それに……忘れられないのが
最後に見た父親の姿。
夜、仕事から帰ってきた父親は
お母さんがいない隙をついて
大きな鞄をもって家を出た。
10分くらいで1度戻ってきて
あたしに言った。
『…リン、ごめんな。
今までお前のことを
十分に愛してやれなくてごめんな。』
あたしは何も言わなかった。
ううん、何も言えなかった。
嫌いだと思っていた父親なのに
いざ、いなくなると思うと
あたしは悲しくなったみたい。
気づかないうちに涙が流れていた。
『…ごめん、ごめんな……
リン、今までありがとう。
……愛しているからな。』
あたしを優しく抱きしめながら言った。
あたしの涙を拭くと
ゆっくりと家を出て行った。

