「う~ん、もう少し右かな。

あっ、行き過ぎた。

そう、そこ。

そこをもっと強く……」


ふぅっと息を吐いて気持ち良さそうに目をつぶる紫水。


『あ~、もう限界。

手がだるい、腰が痛い、疲れた。

ギブアップ……』


はぁ~っとため息をつき、その身を投げ出す私。



「もう終わりなのか?

だらしない」


頭上から聞こえてくる不満の声。


『だって、やれ紅茶を入れろだの、ダージリンじゃなくてアールグレイがいいだの、やっぱりコーヒーがいいだの、隣の部屋から分厚い本20冊も抱えてこいだの、マッサージしろだのあんたが私のこと奴隷のようにこき扱うからでしょ!!』


早口でそれだけ一気に捲くし立てると、


「すごいね~」


と紫水はまったく感情のこもっていない棒読みの言い方で言ってパチパチと拍手する。