いつまでもポカンと突っ立って動かない私に痺れを切らした紫水は実力行使に出た。


私に歩み寄ると、


「ごめんね。

彼女の君を差し置いて他の子と話し込んでしまって。

気を悪くしないで。

僕には君だけだから」


とわざと皆に聞こえるように言い、ヒョイッと私を抱えた。


『キャッ、ちょっと何するの?//』


「お姫様だっこ」


なんのためらいもなく答え、私を抱えたままスタスタと歩いていく。



『いや、あの、だからそうじゃなくて……。

もう、とにかくおろしてっ!!//』


「皆の前だから恥ずかしいんだね?

顔をこんなに赤らめて、可愛い」


さっ、寒い……。


それ以前に話にならない。

両手、両足をバタつかせて必死に抵抗するも紫水には通用しない。



「動くと大切な君を落としてしまうかもしれない。

だからじっとしていてくれ」


と言われ、大人しく腕に抱かれているより仕方なくなってしまった。