「お迎えにあがりました」


朝8時。

琴月家の真ん前に横付けにされたピカピカの黒のリムジン。


乗り込むと当然のことながら、紫水がいた。


彼はジンジャーエールを注いだグラスを手に持ち、もの憂げにゆらゆらと水面を揺らしている。



「やあ」


リムジンに乗り込んだ私と目が合うとにこりと微笑んだ。

寝起きなのか、少し声がかすれている。


『お、おはよう……』


「どうしたの?」


『なんでウチが分かったの?』


「言っただろ?

調べたって」


クスクスと可笑しそうに笑う。



調べたってまさか家族のことも……?

いや、まだバレたと決まったわけじゃない。

隠し通さないと……。



『きょ、今日はどこに連れて行ってくれるの?』


「行けば分かるさ」



この人は底が知れない。


紫水は不敵な笑みを浮かべて窓の外を眺めていた。