「…ふーん、矢野にフラれたんだ」



私たちの後ろから聞こえた声の主は小田切純だ。


「うわっ…」



榊はまた走ろうとしたが、私を見るなり足を止めた。



そして小田切に向き直る。


「おい!矢野には当たんなよ!!もう関係ねぇから!」


「わかってる。お前ら2人はくっつく事ねーんだろ?」


「…あぁ。だから巻き込むな」



…何の話なのかさっぱりだ。


私は榊の袖をひっぱり、密やかに聞いた。



「ねぇ、何の話?」


「いーから黙って「俺が榊のこと好きだから、矢野に嫌がらせしたって話」



途中から小田切に遮られた。


何かが崩れ去ったような顔の榊は鳥肌が立っている。


「……ちょ、お前おかしいって…!まじで!!」



「至って正常だよ」







え、つまり…小田切は




男が好き…










私の中でも何かが崩れ去った。











「そんな俺から逃げなくてもいーじゃん、榊」


「むちゃ言うな!!!今までの態度は何なんだよ!」

「あー、あれ?バレないようにしてただけ」



あのいつも睨むように喧嘩腰だった態度は、榊に気持ちがバレないようにするためだったのか。



「矢野!お前は何納得してんだよ!助けろ!」


「どうやって!」




その後、榊は諦めたのか、小田切の話に付き合うからと、私を解放した。