「…俺ならお前を絶対傷つけない、悲しませたりしない!!」
必死に言葉で伝えようとしてくれている。
だからこそ、私も必死で自分の正直な気持ちを言わないと失礼だ。
「…私は…裕也さんしか」
まだ言い切らないウチに腕を引かれ、抱き締められた。
榊の顔が見れなくなってハッとする。
榊の頭も肩もびしょびしょだ。
私もそうだった。
雨、きつくなってきたんだ…。
手前の歩道の溝からは凄い勢いで流れる水音が聞こえる。
「っ…!榊っ!!」
離れようと身体を押し返してもびくともしない。
「なんで…なんでアイツなんだよ…。……俺を、俺を好きになれよ!!」
かすれた声は痛く、鈍く私の心に響いた。
「好きだ…好きなんだよ…」
雨で濡れて榊が泣いてるのか分からない。
でも、肩が震えていた。
私の頬は冷たい雨に混じり、生暖かい水が伝う。
「私…どうしても裕也さんがいい。…榊が私を好きでいてくれてるみたいに、私も…裕也さんを諦められない…」
すると榊が不意に腕を緩めた。
ちゃんと伝えた
伝わっててほしい
私にとってこれからも大切な友達であってほしい
大切だからこそ
本気で立ち向かった
そっと離れて、私が顔を上げれば、榊がしっかり私の目を見てくれた。

