「矢野!?お前、何でこんなとこいんだよ」
この時、心配になって探しに来てくれた祐也さんに気づかず、大きな声で私を呼んだ榊に私は反応した。
最近は、あの気まずかった日々が嘘のように私たちは元に戻っている。
「榊も、なんでいるの?」
「いや、お、俺はー…散歩だよ、散歩」
「ふーん。そっか…」
─…
公園の外からフェンス越しに2人を見つめる祐也。
あいつ、たしか未裕と仲良い奴だ…。
学祭の時、俺…あいつにイライラしたんだよな…。
また沸々と沸いてくるイライラを押さえようとしていた。
未裕を見ていると、気のせいか、いつもの俺が見る笑顔とは違う気がする。
俺だけ特別だというのが分かる。
気づくとイライラはおさまっていった。
…俺、やっぱ妬いてんだな。
実は気付いていた。
雅樹に「妬いてる」と言われたのを、必死で拒否しようとした自分に。
妬いてた自分に。
ここ何年かはずっと直子に向けてきた俺の意識が今、未裕によって揺れ動いてる。
じっと動かずに見ていたが、榊が未裕に近づいたのが見え、話の内容が聞こえた。
「…お前…さ、また何かあった?」
「え…」
微かに聞こえるが、ところどころ聞こえなかったりする。
「なんか、元気ねぇから…、………のせい?」
「あ、いや、…………だから。私が勝手に思い込んでるだけかもしれないし…」
何て言ってるんだよ…。
またイライラが募る。
何度か2人が話を交わした後、
不意に榊が未裕の肩に手を置いた。
それに合わせて未裕も顔を上げる。
その瞬間…
う…そだろ…
目の当たりにした光景に、俺はじっとしていられなかった。
走り込んで、砂ぼこりが舞う。
ザッ…
「何してんの?」
─…

