前を歩いている榊を見つけ、さらに近づき腕を掴んだ。

「榊!」

呼び止めたって振り向かない気がしたから。



「……」

「………」


呼んだものの、何をいえばいいのかわからない。



すると榊はため息混じりにこう言った。


「……ごめん。俺が勝手にお前ら見てイライラしてただけ」


まさか榊から謝ってくるなんて思わなかった。




「そ…っか」



「……」


相槌をうっても榊は黙り込んだ。


何でイライラしたのか、とか、聞きたいことが山ほどあったはず。


でも聞けなかった。





「………あん時、どーする?なんて…聞く必要なかったのな…」



「…そんなこといつ言ったの?」



「それすら覚えてないってか……」


沈みかけの太陽で暗い廊下では、うつ向く榊の表情は読み取れない。



心配になってくる。

そりゃ無理ないでしょ。


祐也さんとノンの次くらいに感謝してる人なんだから。




「ごめん、私多分ボーッとしてたんだと……」



そう言い終わる前に、急に肩に回された榊の手が私を引き寄せた。




「………ぇ…?」


「………」


ただ黙ったまま私を抱き締める榊。


私の肩に顔を置いてるせいで榊の顔が見れない。






これ…この状況……なに?

えっ…普通友達にこんなの…




しないよね?









私は放心しながら固まっていた。