「あ、あの…」

私は戸惑いながら声を出した。



「久しぶり、未裕ちゃん」

手をふりながら近寄ってくる金沢さん。



「…どうして、ここに?」


その質問にも金沢さんはにこやかに答える。



「さっき4人で集まってたんだけど、祐也が今日未裕ちゃんの学校の学祭だ…って言うから」



「私達が行ってこいって言ったの」



そう言ったのは直子さんだった。




祐也さんと私以外の皆はニコニコとしている。


けど、私はそんな気分じゃなかった。



直子さんに言われたら、いくら祐也さんでも従うだろーなぁ。


仕方なく来たって事だよね…。



直子さんと一緒に居れる時間を私が削ったから、


だから怒ってるんだよね…。





浮かれて、バカみたい…。




「私、まだ仕事残ってるんで…あの、来てくれてありがとうございました」


そう行ってノンのいる自分のクラスの模擬店に戻ろうとした。


すると…



「未裕…お前が作ったやつは?」



ぽそっと聞こえた愛しい人の声。



さっきまであんな冷たかったのに、今のはやけに優しい。



でも…



「ごめん…たぶんもう売りきれて、ない…」


あんなに人が長蛇の列を作ってたんだもん。


今買いに行ったところで、食べれるのは小田切純が作ったやつくらいじゃないかな…。





「ミヒロ!」



もう一度謝ろうとした時に、後ろからノンに呼ばれた。



「もしものために、私がミヒロの作った分、取っといたから!」



そういって駆け寄ってくる。



「榊が欲しそうにしてたから、また後であいつにも作ってあげてね」



そう付け加えて、また戻っていった。


ノンは囁きのつもりで言ったっぽいけど、祐也さんに聞こえたみたいで、彼の肩がピクッと反応していたのが見えた。




「なんか、すごいタイミングいい子だな…」


近藤さんが感心したようにうなずいている。