衝動的に出た言葉に対して、榊の反応は薄かった。
「ふーん…」
……それだけ?
なんか逆に苦しくなるんですけど…!!
「じゃあさ、もし俺が今日1日一緒に回ろうっつった時に、あいつが来たら…お前、どーすんだよ?」
何いってんの?
って笑って流そうとしたが、榊は私の目から視線をはずさない。
だから、笑えない。
「く、来るわけないじゃん。榊とノンと一緒に…」
回るつもりだし…と言うつもりだった。
が、榊の顔を見る拍子に横に目をやると、奥の廊下から見慣れた体格の人が現れた。
その時、心臓が止まったかと思った。
「…ぇ…?」
小さくなった声がその人物にぶつかってしまったのか、私とバッチリ目を合わせてから反射的に反対方向に向き直り、消えてしまった。
私は思わず目の前の榊の横をすり抜け、走りだした。
「…」
榊は無言だった。
廊下を曲がった所にすでに姿はなし。
息をするのも忘れたように階段を駆け降りた。
すると校舎裏に向かう靴が微かに見えた。
私はそれを追って、校舎裏で後ろ姿を見つけて叫ぶ。
「祐也さん!」
祐也さんはそれに反応して歩くのを止めた。
私はなんでいるのかとか、そんなのを考える余裕なんてなかった。
「…ゆう…やさん!!来てくれてありがとう!」
息を切らしながらも、嬉しくて嬉しくて、走って距離を縮めた。
少しうつ向きかけの祐也さんに向かって笑顔で言ったのに…
返ってきたのは
「なんか…楽しそうだね」
たった一言だった。
それも何処かトゲがあるような…
決して言われて喜べる状況じゃなかった。

