桜が舞う坂道。




花の絨毯を踏みしめて、新しい世界へ歩んでいく。




晴れた空には淡いピンクがよく似合う。




矢野未来、高校生になりました。








「何?先生、新入生に手ぇ出してんの?」




「泣かされたら俺に言えよ〜。」




「ぷっ。」




襟元にあるバッジを見れば二人とも三年生だった。




「お前ら人を何だと思ってんだ。ほら、教室戻れ。」




三年生にもなると、なんだか大人ってカンジがする。




一気に緊張が解けた私は教室へ行く途中に迷っていた事も忘れて笑っていた。




「ったくアイツらは……。A組はこの階段上がってすぐ左の教室な。」




「あ………。」




「………もしかして、方向音痴?」




恥ずかしくて頷く事しかできなかった。




「それなら教室の前まで連れてってやろうか?」




流石にここまで来れば案内されなくても一人で行ける。




からかうこの教師は一体何を担当しているんだろう。



「いえ、ありがとうございました。」




階段を上がって入った教室には、既にクラスのほとんどの生徒がいた。




黒板には席順を書かれていて、指定された席について周りを見渡す。




私の机、私の椅子、私の教室、私のクラスメイト。




何もかもが新鮮で、自分まで生まれ変わったように思えてきた。