「未来って携帯持ってないんだ、珍しいね。」




「買ってもらいなよ。そしたらいつでも連絡とれるしさ、女子高生には必需品だよ。」




「んー、頼んでみる。」




私がクラスに馴染んできた頃、周りはある程度仲良しグループに別れ始めていた。




密かに行われるイベントじみたそのグループ分けにも難なく参加できた私。




そんなある日、授業中にどこからか鳴り響いた着信音。生徒は顔を見合せ、機嫌を損ねた先生は電源を切るよう呼び掛ける。




そんな事があったおかげ、というべきか。有希が休み時間に私の携帯番号とメールアドレスを聞いてきた。




今まで聞いてこなかったのはためらいがあったからだと思う。




友達といってもまだ日は浅い。どこまで踏み込んでいいのか分からなかったのだろう。




意外や意外。そんな照れ屋な一面を彼女は持っていた。




「買ったら絶対教えてよ。毎日メールするから。」




「はいはい。上総は?」




「私はいいよ。」




相模上総(さがみかずさ)




有希とは中学からの友達、という事で自然と仲良くなっていた。




おっとりとした彼女は古風なのか興味がないのか。不思議と謎が多い。




ともかく携帯電話を持っていて当たり前な時代。しかし、欲しいけど財布の中を考えると簡単には手を出せない。




今夜にでもお父さんに頼むだけ頼んでみるかと思っていた矢先、思わぬ事が待ち受けていた。