やっとデビューって時に、俺の指は段々と動かなくなってきていた。
 

「祐樹嘘だろ」
「本当だよ。俺の指もうすぐ、動かなくなっちまうんだ」

 
病院のベッドの上で、俺は同じバンドのボーカルを担当している、光輝に脳に腫瘍ができていたことを告げた。
 

「それだけじゃないんだ。この腫瘍さ、俺に考えることさえ許してくれなくなるんだ。いずれ俺は植物人間になっちまう」
「嘘だ……」
「ごめん」
「やっと俺達デビューできるのに。なんで今からって時に」
 

一緒に活躍したかったよ。ごめん、俺が最初から居なければ光輝は泣かなくて済んだのに。