先ほど転んだためか
膝が真っ赤になっていた。
悪魔みたいな人は
私をさっきの部屋に
迎え入れてくれた。



小さい部屋には
たくさんのコードが
絡み合っている。
ベース、ギター
エレクトーン、ドラム
新品とは思えないが
使い古された楽器が置いてある。


中央にはマイクスタンド。





「汚くて悪いな」

「いえ、あの…軽音部ですか?」

「…っていうか非公認?」



悪魔みたいな人は
小さい冷蔵庫から
缶コーヒーを出して
私に渡してくれた。



「ありがとうございます」

「あんた特進の一年?」

「あ、はい。えっと…」

「俺は三年。普通科」

「なん…「なんで特進の棟にいるか不思議だろ?」



なんだこの人
読心術でもできるのだろうか。思わずコーヒーを吹きそうになる。


悪魔…いや、先輩は
ネクタイを片手で取り去ると
その辺に置いた。
右耳から小さなピアスが
ちらりと覗いた。



「まあ、ちょっと事情がな。とりあえず普通科も特進も自由に出入り出きるんだよ」


「三年は自由なんですか?」

「いや、普通は特進も普通科も出入りするなんて有り得ない」



先輩が窓から普通科の
校舎を眺める。
夕陽が差し込みはじめ
校舎が赤く見えた。



異様な決まりがある
この学校に
私は不安を覚えた。