「姉御、三代目のお迎えですか?ご苦労様です」


そう言って制服姿の私に頭を下げたのは、組の中では一番下っ端の舎弟、菊ノ井だった。


「おは。菊ノ井、あんたまた玄関掃除やらされてんの?なんかドジでも踏んだ?」


「この間の組総会で分家の若頭にお茶溢したんだよ。俺が一言詫び入れたから大事には至らなかったけど」

「三代目!おはようございます!!その節はどうもありがとうございましたぁ!」


長い廊下の奥からやって来たハルに菊ノ井は深々と頭を下げた。


今日も朝からハルは完璧だ。

栗色の細い絹糸みたいな髪。
低血圧のせいで、昼間よりも余計に白い肌。

紺色のブレザーの制服も似合ってはいるけれど、むしろ私が着ている女子制服の方がもっと似合うような気がする。


「何、サク。そんなにジロジロ人のこと見て。俺って見とれるほど美しい?」


「…うん、まぁ、もうそれでいいや」


「何その適当な感じ。ムカつくなぁ」