「嫁入り前なのに。貰い手いなくなるね」


「あのねぇ。…ったく誰のせいでこうなったと…」


「俺でしょ」



まったく悪びれないハルに、思わずため息が出る。


でも、次の瞬間、私は我が耳を疑った。



「だから責任とって俺がサクを貰ってあげる」


「…え?」


「仕方ないでしょ。サクみたいな凶暴な女の面倒見れるのって俺くらいのものだし」



冗談とも本気とも取れる笑顔を浮かべて、ハルは言う。


仕方がないから。
責任を取るために。



何が本当で何が嘘なのか。
ハルは本当に分かりにくい。


でも、それなら。



「それはこっちの台詞。ハルみたいな面倒臭い奴に付き合ってやれるのは私ぐらいのものでしょ?」


私も、ハルに倣って、ちょっとだけ駆け引きをしてみよう。


甘い甘い恋人同士になるつもりはない。


そんなの私たちには無理でしょう?



「上等じゃん?」



そう言ってハルが笑う。


うん。
多分私たちにはこれくらいがちょうどいい。



おかえりなさい。
私の婚約者【フィアンセ】