もう、許せない。

堪忍袋の緒が切れた。



私は、権藤たちに聞こえないような小さな声で、ノブに言った。



「ノブ、剣道の腕前ってどれくらい?」


「え?えーと、中学の頃は一応全国大会に出場してましたが…」


「…そう。本当ならノブのことは絶対巻き込みたくなかったし、危険なこともさせたくなかった。でも、こうなったら、ノブにも手を貸して貰うしかない」


「…サク、さん?」


「ヤクザが嫌いでもいい。でも、今だけ。この瞬間だけ、私たちの仲間になって」


「…!…もちろんです!」


ノブの答えに微笑んで、私は手首に意識を集中した。
ノブを気遣って、危ないことはしないつもりだったけど、本当ならこんな縄脱けくらいは容易いことだ。



「よし。縄は解けた。ノブ、1・2・3で攻撃開始だよ?準備はいい?」


「…はい!」


「行くよ。1・2・3!」



ハラリと縄がほどけ、私たちは左右に散らばった。



「ハル!!こんな奴ら蹴散らすよ!!」


視線の端で、私のその声に、ハルが笑った気がした。