権藤の声がやけに耳に響いた。


数分の間。

ハルは小さくため息をついて言った。



「…分かった。条件は飲む。だから2人を解放しろ」


「…ハル!」



思わず叫んだ私に、もう一度ナイフが突き立てられた。



「承知していただいて光栄です。ですが、解放する前に、こちらにサインしていただきましょう」



権藤はそう言って私から離れ、一枚の紙切れをハルに差し出した。



「…契約書か。随分用意周到だな」


「組長も三代目も、仁義を重んじる方。契約があれば、何があろうとそれを守るかと思いまして」


「やめて下さい!ハルくん!!自分のためにそんなことは…!」



権藤の言葉を遮って、そう叫んだのはノブだった。


ハルは驚いたようにノブを見た。

でも、次の瞬間。



「うるっせぇんだよ、この餓鬼が!!」


「うっ…!」


ノブは権藤の仲間の一人に思い切り腹部を殴られた。


「ノブ!?」


私が名前を呼ぶと、ノブは苦しそうにしながらも答えた。



「だ、大丈夫…です」