「なぁにが悪いようにはしないだ。ふざけんなっつうの!!」


今現在の状況に激怒して、私は思わず悪態をついた。

拘束されながら連れて来られた場所は、港の古い倉庫の中だった。

埃臭いその倉庫の柱に、私とノブは現在進行形で縛り付けられている。



「…ごめんね、変なことに巻き込んじゃって…」


背中合わせのノブに向かって、私はそう語りかけた。


「…いえ、サクさんのせいじゃありませんから。それにしても、サクさんは何者なんですか?あんな本物っぽいヤクザにも顔が知られてるなんて」


こんな状況なのに、嫌、こんな状況だからか、ノブは少しだけ心を開いてくれているらしい。

私は苦笑しながら答えた。


「ま、神竜組三代目の婚約者だからね、私は。あ、元だけど」


「婚約者、ですか?サクさんがハルくんの?えっと、元はっていうのは…?」


「言葉の通りだよ。昨日婚約解消宣言、アイツにされちゃったから」