「まぁ、そんなにいきり立たないで下さいよ。相変わらずですね、姉御は」


「あんたに姉御なんて呼ばれる筋合いはない。とっくにうちの組からは抜けた身でしょう?」


睨みをきかせたまま私は言った。


権藤は元は神竜組の分家頭だった男だ。

だけど、組の御法度の薬に手を出して、分家共々神竜組からは抜けさせられた。

何で、こいつと昨日のチンピラが一緒に?


私の疑問に答えたのは、他でもない権藤だった。



「こいつらはうちの舎弟でしてねぇ。本当に出来の悪い奴らで」


「ああ、そういうこと。で、この状況は一体何のつもり?」


私が問うと、権藤は大袈裟な身振り手振りで話し始めた。



「出来が悪くても舎弟は舎弟なんでねぇ」


「敵打ちでもしに来たと?」


「まさか。私がそんな情の深い人間に見えますか?」

「見えないね、全く」


「さすが姉御だ。いやぁ、神竜組を抜けてから何だか上手くいかなくてねぇ。それで昨日のことがあって、ふと思い付いたんですよ」