「どうせノブのことだって、自分が俺の面倒見るのが嫌で押し付けようとしてただけだろ?」


「…!」


「俺が気付いてないとでも思った?」



私の考えなんておみとうしだというようにハルが口の端を上げる。


痛いところをつかれて、私は何も言えない。



「…お互いに清々するでしょ。どうせじいさんたちの口約束なんだし」


「ハルは…!」



それでいいの?


その一言を口にすることが出来ない。


拒否されるのが怖かった。

あんなに嫌だった、婚約を解消出来て、本当なら嬉しいはずなのに、何故だか酷く胸が痛い。


ハルにとって、私なんてどうでもいい存在なんだ。

そう思ったら、情けないくらい泣きたくなった。


俯いて何も言わない私を見て、ハルはそれを肯定だと受け止めたのか、私に背を向けて歩き始めた。


「じゃあね、サク」


「…っ!」



伸ばそうとした手は、宙を掴む。