「…騙したんですか?」


ハルの顔を見ることなく、ノブはぽつりと呟いた。


「ノブ、それは!」



違う。

そう言おうとした私を制して、ハルが言った。



「そうだよ」


「ちょっ!ハル!!」



何を言い出すのかと思えば、私の声なんて無視して淡々と続ける。



「警察官の息子なら、情報とか横流ししてもらえるかと思って」


そんなこと、欠片も思ってないくせに、ハルは意地悪く笑う。


ハルは嘘が上手い。
だから、この台詞が嘘だって気付けるのは、私ぐらいのもの。



「…最低ですね」



案の定、ノブはハルの言葉をすんなり信じて、敵意を剥き出しにした。

穏やかなノブが怒る姿は、何だか不似合いで、思わず目を反らした。



「最低、か。ヤクザには最高の褒め言葉だね。ま、正体がバレたら仕方ない。もう関わることもないでしょ」


「…そうですね。さよなら」


「ちょっと、ノブ!!」


駆け出したノブの背中を、オハナが慌てて追った。