途端に静かになった路地裏で、ハルの小さなため息だけがやけに響いた。



「…嘘、ですよね?」


その居心地の悪い静けさを打ち破ったのは、他でもないノブだった。
困ったように笑いながら続ける。


「嘘に決まってますよね?あのチンピラを追い払うためにあんなこと言ったんですよね?」


「そ、そうだよ!嘘だよね、ハル」



取り繕うように言ったオハナの台詞に、ハルはしばらく返事をしなかった。


「…オハナもサクも、もういい」



いつもよりワントーン低いハルの声。

私もオハナも何も言えず、押し黙った。



「…嘘じゃない。真実だよ」


小さいけれど、きっぱりとした声でハルは言った。

その瞬間、ノブが酷く動揺するのが分かった。


驚愕と信じられない気持ちと、そんな感情が入り交じった瞳でハルを見つめている。



「俺は神竜組の跡取りだ。誰が何と言おうと、俺はそれを誇りに思ってる」