戸惑っていると、思い切り腕を引っ張られた。

そうなるともう、付いて行くしか方法はない。



「ちょっとハル?どこ行くつもりかって聞いてるんだけど」


「だからお腹空いたって言ったじゃん。ご飯食べに行こ」


「行きたいなら一人で行きなさいよ!なんで私まで…」


「へえ、そう。吉津の懐石料理奢ってやろうと思ったのに、食べないんだ?」


「…!…お付き合いいたします…」



私がそう言うと、ハルは勝ち誇ったように笑った。


吉津は老舗の日本料理店。一般人では絶対入れないような高級店だから、こんなチャンスを逃したらもったいなさすぎる。



「っていうか、今から予約なんて取れるの?」


「あのね、職権は乱用するためにあるんだよ?」



ハルは悪魔のように微笑んで、携帯電話のボタンを押した。


まったく。
さっきまで、あんなにしょげてたくせに。