「まさかノブが警察官の息子だったなんてね…」


適当に理由を付けて解散した帰り道、隣を歩くハルに私は言った。


世の中っていうのは、本当に狭いものなんだって、今日ほど実感した日はない。
たまたまクラスメイトになった編入生が、天敵の息子だったなんて、なんて運の悪い偶然なんだろう。


「ハル、ショックだった?」


何の反応もないハルに、私はもう一度問いかけた。

するとハルはぴたりと立ち止まって私を見た。


「別に。もう近付かなければいい話だし」


「嘘ばっかり。ノブのこと、気に入ってたんでしょ?ハルが初対面の人とあんな風に普通に話してるの初めて見たもん」


「そんなことないって言ってるだろうが」



ハルはそう言って、今度は私を置いて勝手に進み出した。


「ちょっと待ちなさいって!」


慌てて後を追って、また隣に並ぶ。

横顔を覗けば、ほんの少しだけど暗い顔。
機嫌が悪い時のハルの表情だ。