「ねぇ、これからどうする?真っ直ぐ家に帰る?それともどこかで夕飯食べてく?」


「そうだね。それもいい…」

「あ」



オハナの提案に賛成しようとした私の声に、ノブの声が重なった。


「何、ノブ。どうかした?」



ハルが小さく首を傾げると、ノブは少し照れ臭そうに答えた。


「すいません。偶然父親を見つけたものだから驚いて」


「お父さん?ノブの?」


私がそう尋ねると、ノブは数メートル先を指差した。
私もハルもオハナも、その方向へ目をやった。

だけどもちろん、人通りの多い繁華街で、どれがノブのお父さんかなんて見分けがつくはずもない。


「もしかして、あの眼鏡かけたスーツ姿の人?」


「あ、違います。その人じゃなくて」


私が目星を付けた人物はどうやら別人らしい。

もう一度よく目を凝らして見ようと思った時、ハルがぽつりと言った。


「…あの人じゃない?あのトレンチコート着た」