Wolf..





お邪魔しますと一言告げる。

人の気配はない。

リビングに入るが、やはり龍は不在のようだった。



「龍に用事あるのにな…。」



俺はシュンと顔を曇らせ俯く。

鞄の中には、お礼のお菓子が入っている。

お父さんが俺に持たせたのだ。

『悲しい顔をすると、良いことは起こらないぞ、由羽。』

お父さんの言葉をふと思い出し、気を取り直して、顔を上げた。



「紺野とかレイは、たまにしか来ないの?」


「いや。毎日来るよ。ま、俺たちも色々やることあるし♪」


「あぁ…。あのボランティア?」



昨日の会話を思い出しながら、俺は聞く。

それにしても、バイク乗り回すヤツらと殴り合ったりするのだろうか。



「“wolf”だよ。…あれ?言ってなかったっけ?」


「なんの話だ?その…、ウルフって何?」



色々積み重なり、頭が混乱状態だ。

対する郁哉は妖しい笑みを見せた。