大分歩かせてしまっただろう。
自分で走ってるときは気づかなかったけど、自分の家から龍のとこまで、結構距離がある。
下駄とスニーカーで歩くより
同じくらいの背丈の奴をおぶって歩く方がキツいはずだ。
「左曲がってもうちょっとで、俺んち…。」
「了解♪」
全く疲れを見せない郁哉に、またまた感心せざるをえなかった。
普通の男なら息くらい乱す。
歩くペースも変わっていない。
「疲れてない?」
「余裕だし♪お前かついでもう一回、往復出来るくらい余裕だし♪」
「…なら、よかった。」
アッという間に俺は家に着いた。
郁哉が俺をソッと下ろして、俺はゆっくり立ち上がった。
「足の痛みもヒいてきた。マジでありがとな!紺野たちにも、ありがとう伝えといて!」
「了解。………って……。」
玄関の明かりが俺らを照らす。
郁哉は口をポカンと開け、俺が背を向けている玄関に指さした。
「えっと…、こんばんはッス!俺…あの…」
急に玄関の方に頭を下げる郁哉に驚き、俺は後ろを振り向いた。
そこには、二、三時間前と変わらぬスーツ姿のお父さんがいた。
