郁哉は俺を軽々しくおぶって立ち上がった。
チビっこい男だが、やはり力持ちだ。
改めて感心していたのもつかの間…
「胸当たって気持ちい♪」
「…お、おろせ!!変態っ!!!」
俺は怒りで顔を真っ赤に染め、ポカポカと郁哉の頭を叩いた。
「いてっ…、いてぇって、まぢ!冗談だから落ち着け!!」
せっかく見直していたのに、どうして変なことを言うんだ。
男の変態なところはどうも見受けられない。
「む……。もう変なこと言うな。」
「分かったって!痛いよ、まぢ…。」
再度、キュッと郁哉の首に腕を回す。
たった2時間ほどの間に、たくさんのことが起こりすぎて実感がわかない。
お父さんとの喧嘩…
(俺が一方的に悪いけど…。)
龍に救助されたこと…
(紺野がいて驚いた。)
何やらボランティアに仲間入りした…
「ねぇ、郁哉とまた会えるの?」
「え?会わないつもりなの?」
会うことが当たり前だと言うように、しれっと言った郁哉。
なんだか言い表せないくらい、心に嬉しい感情が取り巻いた。
「会いたいっ♪つか、会いに行く!」
足の痛みなんてどっかに消えてしまいそうなほど、俺の心は晴れていた。
お父さんに素直に謝ることも、今なら簡単に出来そうだ。
