Wolf..





「レイって呼んでもイイ?」


「うん…。じゃぁ、ユウって呼ぶ…。」


「へへ!なんか嬉しいー」



初対面さを感じない雰囲気に、自然と顔がふやける。

紺野を懐かせることは、なかなか難しいようだ。


レイが包帯を巻いてくれた足を伸ばしながら、居心地の良さに浸る。



「そーいえば、あの二人どこ行ったの?」



俺の質問に、レイはルービックキューブを回す手を止め、こちらを見た。

紺野は相変わらず口を閉じたまま…、と言うより、普通にジュースを飲んでいた。



「どこって…、どこなんだろ…。」


「お、俺が聞いてるんだけど…。」



まともに話が出来ない。

人生の中で、自分をまともだと思ったのは初めてだ。



「……殴り合い……してると思う…。」


「殴り合い〜!?あの金髪は分かるとして、あのチビっこいのが?」


「金髪は龍で……、チビは郁哉(イクヤ)。」



“イクヤ”と言う男の威勢のいい、俺を睨んだあの目。

嫌いではないし、むしろ反抗的な態度は俺を燃えさせる。

ぜひとも懐かせたい相手だ。


それにしても、やはりこの男たちは、シャレではないが、俗に言う“族”なのだろうか。

龍はいかにも族のリーダーっぽいし

紺野だって、部活に所属していないのに、運動神経は抜群だ。


極めつけは、レイの言葉。

『殴り合い』なんて、まさしく族のようだ。



「イクヤかぁ。また会えるかな?」


「多分……、もうそろそろ……。」



レイが言いかけたとき。

自転車のチリンチリンが外から聞こえた。