「龍に……助けられたって…?」
「俺…、お父さんと…喧嘩しちゃって…。靴履き間違えて走ったから靴ずれしちゃってさ…。」
情けない声で話す俺。
レイはそっと俺の足に触れる。
「靴ずれ…どころじゃ…ないだろ……。」
そう言ってレイは紺野に目配せした。
紺野はレイの言いたいことが分かったのか、隣の部屋に行った。
「どこから、来たの?」
「中江沢から…。」
「………バカだ…。」
無表情なレイは、大人っぽく男前だけれど、どこか赤ちゃんのような癒やしがある。
なんて思っていると、隣の部屋から紺野が薬箱を持ってきた。
「迷惑かけて…、ごめんなさい…。」
自分勝手にお父さんに怒鳴って、我が儘言って…
家を出たら出たで、足痛めるし…
それに、今こうして、見知らぬ人にお世話になっている。
自分が情けなくて仕方がない。
レイは薬箱から取り出した綿に、たっぷりと消毒液を染み込ませた。
「痛いだろうけど…、我慢して…。」
「うん…。………い゛っ!!!」
トントンと、綿に染み込んだ消毒液が、俺の足を痛みで癒やす。
痛覚って、どうして脳に直接くるんだ…
「我慢…我慢…。」
「うっ…ん…!!うおぉ…!我慢!!」
「深山、顔やべーよ…。」
紺野が後ろで、呟いていた気がしたけど、気にしないぞ。
気にしたら悲しくなるもんな。
なんて、虚しく思うも、やっぱり今の俺は限りなくダサく、情けなかった。
