俺は部活をしていない。
基本的にサッカーもバスケも野球もバドミントンも、大好きだから。
何かに固定して極めようとは思わなかった。
毎日の日課になりつつある、学校の近くの公園でのサッカーを終え、俺は家に向かった。
家に辿り着き、ドアの前で空を見上げる。
すっかり暗くなった空には、月がくっきり光っていて、星もチラチラ輝いていた。
「ちょっと遅くなったぁ。……ん?」
玄関に並べてある靴。
普段はお父さんと俺の靴だけなのに、女モンの靴があった。
「お父さん……?」
恐る恐るリビングの扉を開く。
案の定、知らない女がいた。
「お前、誰……ですか。」
低いテーブルで、お父さんの向かいに座る女を睨む。
お父さんは「落ち着け」と言ってる気がするが、俺は聞いてないフリをする。
「あ、由羽…くん?私は三浦 早希(ミウラ サキ)。お父さんの会社の知り合いで…」
「お父さんの知り合いだか知らんけど、なんでココにいんだよ!!」
「それは…」
オドオドする女。
俺は完全に我を失って怒鳴り散らした。
「由羽!!!」
お父さんの険しい怒鳴り声に、俺は肩を揺らして驚く。
ゆっくりお父さんの方へ振り向くと、お父さんの顔は怖く歪んでいた。
「お…とうさん…」
「この人は三浦さん。俺の同僚で、度々良くして貰ってる。」
「でも…、でも…」
久しぶりにお父さんの雷が降ってきて、俺は恐怖で泣きそうになっていた。
三浦さんとやらが悪いんじゃない。
お父さんが、他の女の人を好きになるのはイヤなんだ。
