しばらく無言の時が続きました……。
その沈黙を破ったのは、当然ながら彼の方でした。
「いつもあんたのことを考えてた……」
一人言のようにそう呟き、もう一度私に触れました。
「いったいどんな顔をしているんだろう」
…輪郭をなぞりました。
「どんな風に笑うんだろう」
…頬をなぞりました。
「どんな声をしているんだろう」
…唇をなぞりました。
「ほんとに女なんだろうか」
…髪の毛をすっと梳きました。
「どうしてなにも喋ってくれないんだろう」
…震える喉に触れました。
そして、
そっと手を離しました……
「からかわれてるだけだと思って、勝手にムカついた時もあった」
そう言って彼は私の姿を探すように顔を上げました。指先で再び私の頬を撫でました。
「…でも結局さ、気が付いたんだ。
あんたのことをあれこれ考えるのは、
俺があんたを好きってことなんだって……」
私に触れていた手をそっと離しました。
「あんたはどうだった?
俺のこと好きか?
それともやっぱり俺をからかっていただけか?」
彼は尋ねました。
私が声を持ってないと知りながら……
…でも、
言葉以外で、その問いに答える手段は一つだけあるのです……。
彼の唇に、
私はそっと口付けをしました。
「その答えだけで、俺は満足だよ」
彼は笑ってそう言いました。

