俺は,保健室を先に出て行った。


夢に出て来た男の人。
知らないけど懐かしい。

その話を聞いて,凄く胸が痛かった。

…やっぱり。
忘れてしまったのか?
まだ幼かった凛雅は,ただ覚えてないだけなのか?



それは,今から10年以上前。

俺の家の近くに,小さくて可愛らしい女の子がいた。
その子は俺を兄のように慕ってくれて,多少歳は離れていたが,俺は小さな恋心を抱いていた。

しばらくして,俺は引っ越す事になり女の子とはそれっきり。

薄れていく記憶の中。
抱いた恋心とその子の名前は決して忘れなかった。