ちゃんと言葉にできたのはどうやら最初だけで。
なけなしの勇気を振り絞った声さえ届かないとなれば、情けない私の口は、満足に言葉も紡げないようだ。
だから、だからっ―と、そればっかりな私に。
「…言ってくれないとわかりませんよ?」
困ったようにシュン…と眉尻を下げてみせる先生。
わかっている。
私は、わかっている。
この男は私の言いたいことは手に取るようにわかっているって。
だって、この楽しそうな顔。
心配そうな仮面の下には、きっと悪代官もびっくりな悪人顔が隠れてる。
困ってる私をみて、それで楽しんでいるんだ。

