私のぐるぐると渦巻く感情を、お得意の洞察力で察知したのだろう。
何か、何か言い返してやろうと開きかけた私を、遮るように重ねられた声。
「……億が一、この僕が待って差し上げたところで」
一回、言葉尻を切って、はあ、と一息。
おいコラ、無駄にフェロモン放出するな、こちとら多感な女子高生なんだよこの野郎。
「貴女ができるとは思いませんがね、貴女が」
言うや否や、キュポッと小気味良く蓋を開けられたペンが、サッサッと踊るように紙の上を滑っていく。
その筆先が描くのは、大きなマル印―…ではなくて、大きなバツ印。

