「ほら、貸しなさい」 「あっ…」 すっかり本来の用途を失って、私の膝置きと化していたわら半紙のプリントが不意に奪われる。 一瞬、視界をよぎった一流のピアニストのように細くしなやかな指が、赤ペンを握り込んでいる。 「まだ終わってないのに!」 「もう10分も待ちました。…十分でしょう?」