「…那都さん? 照れているのですか?」 必死に現実というものから目をそらそうとする私を、飽きもせず見つめていた先生が、唐突に口を開く。 "やめてよ、身体に穴が開きそう" そう言ったところで返ってくるのは "じゃあ那都さんも僕を見たらどうです? そうすればおあいこですよ" という、的外れで、とんちんかんで、おまけに至極恥ずかしい台詞だと容易に想像できるので、そんな野暮なことは口が裂けても言わない。 (というか既に経験済みである。) 代わりに「はあ? 馬鹿じゃないの」短く答える。