「雛!」

「!」

雛は俺の存在に気づくと途端に走り出した。
遅い足にはすぐに僕は追いついた。

「何で逃げるの?」

「やだあ、やだやだ!」

「僕、何かした?ごめんね。」

「あ・・・春が春になった。」

「え?」

「優しい春になった。」

「何が?」

「春がね、おっきな声出してね、鬼になっちゃって怖かったの。春は雛のこと嫌い?」

「ううん。」

頭をよしよし撫でた。
そしたらニコニコして。

「じゃあよかった。雛は春、好きだよ。」




・・・このときのことは何故か鮮明に覚えてる。
夢にだって出てきたことがあるし。


「そっか。」