「よぉ、アキナちゃん」


 陸上部の、先輩。

 相変わらず、ムカつくヤローだ。


「ちょっと面貸してもらおうか」


 無視して通り過ぎようとしたら、腕を強く掴まれた。


「アンタに構ってる暇なんてねぇんだよ」

「お前最近、可愛いのと連んでるよな」


 ……?


「あんだけ可愛けりゃ男でもいいよなぁ」

「……どういう意味だ」

「アキナちゃんの連れは預かってる。傷物にされたくなけりゃ大人しく着いて来いよ」

「てめぇ……っ、神宮は関係ねぇだろ!」


 沸々と沸き起こる怒りに任せて、ソイツの胸倉を掴む。

 ソイツは余裕の笑みを浮かべて俺の手を振り解き、階段を下りていった。


 ――……くそっ!


 何で、神宮が……!!


 今すぐにでも先輩をぶっ飛ばしてやりたかったけど、そんなことしたら神宮の居所が分からなくなっちまう。

 憤り、焦り、苛立ち……。

 色んな感情がぐるぐるして、訳分かんなくなってきた。

 でも今は、アイツの言うとおりに着いていくしかない。