「……他のヤツらに、言うなよ」


 俺は、右足のジャージの裾を膝まで捲りあげる。

 膝に巻かれたサポーターを見た神宮の顔が、少しだけ変わった。


「怪我、してたの?」

「コレが原因で、陸上部を辞めたんだ」

「そう……だったんだ。でも、なんで俺なんかに話してくれたの?」

「なんとなく、だ」


 意味なんて無い。

 神宮になら、話しても変な同情とかされないかな、って思ったんだ。


「とにかく、堤とかには絶対に言うなよ」


 アイツに知られたら何を言われるか……。


 裾を元に戻して立ち上がると、神宮は何だか難しい顔をしていた。


「仕方ねぇな。面倒だけど行くか」

「高槻」


 伸びをする俺を、神宮が呼ぶ。

 長めの前髪に、目が隠れていた。


「……何でもない。気にしないで」

「あ? ああ……」


 もしかして、俺の怪我のこと気にしてんのか?

 そんな訳、無いよな。