「ねぇ」


 神宮の声が静かに響く。


「どこか、怪我でもしたの?」

「お前みたいに鈍くさくねぇよ」


 俺の一言に、神宮は湿布を巻いた手を隠す。


「試合の後半、足を庇っているように見えたけど」


 神宮にバレるようじゃ、きっと他のヤツらも気付いてんだろうな。


 試合中。

 徐々に膝が痛み出した。

 足を踏み出す度に、痛みが響いて。

 シュートする為に跳び上がる瞬間、やばい、って思った。

 これ以上やったら、また、あの時みたいになるんじゃないか、って。

 別に、痛みが怖い訳じゃない。


 あの時に感じた、敗北感とか絶望感とか、そんなぐるぐるした嫌なものをまた味わうなんて――まっぴらご免だ。


 たかが球技大会。

 そう思ってたのに。

 気付いたら、熱くなってる自分が居た。

 同時に、手に届きそうだった勝利を、簡単に諦める自分が居た。


 そんな自分に、嫌気がさした。